木造最強の構法として名高い【SE構法】を皆さまも一度は耳にされたことがあるかと思います。
弊社はSE構法の登録施工店として今まで数多くのSE構法を手掛けてきた経験と実績をもとに、本日はそのSE構法についてわかりやすく解説していきたいと思います。(2022.09.24 改稿)
SE構法とは
1. SEって何の意味?
SE構法の「SE」とは、Safety Engineeringn(工学的に安全)」の頭文字からなり、構造計算(許容応力度計算 / 立体解析構造計算プログラム)を行うことで、科学的に根拠のある耐震性能を確かめ実現させる構法という意味を込め「SE構法」と名付けられております。
2. SE構法の誕生の歴史
SE構法は1995年に発生した「阪神淡路大震災」で多くの木造家屋が倒壊した悲劇を教訓に、「株式会社エヌ・シー・エヌ(以下(株)NCN)が立上がり、構造建築家の「播 繁(ばん しげる)」氏と共同開発のもと、構造計算による木造でも鉄骨やRCに負けない強靭な家=SE構法が生み出されました。
3. SE構法は唯一無二の木造ラーメン構法
ラーメン構法とは、柱と梁を剛接合にすることで強固な構造をつくりあげる構法で、耐震性において極めて信頼性が高く、歴史的な蓄積もあり、鉄骨造やRC造では主流となっている構法です。
ただし鉄やコンクリートと違い、木という天然素材は均一な強度の材料確保や木と木の接合方法において剛接合を実現させることが難しく木造住宅においては今までラーメン構法という発想は存在しておりませんでした。
これら木造の弱点を克服し、日本で初めてラーメン構法を木造住宅に取り入れたのがSE構法なのです。
SE構法で実現できること
1. 大空間・大開口
大空間・大開口はSE構法の最大の特徴の一つと言えます。
SE構法は「木造ラーメン構法」を可能とし、今まで高コストの鉄骨造でしか実現できなかった広大な自由空間が耐震性能を担保した上で実現可能です。
2. 開口の広いビルトインガレージ
SE構法では、通常9mまでのスパンを可能とし、最大3台分の駐車スペースを間に柱や壁を設けることなく実現可能です。
さらに、SE構法独自の構造計算により12m以上の開口スパンも可能です。
3. 吹き抜け
上下間の空間をつなげる「吹き抜け」はとても魅力的な設計手法で、SE構法でもよく採用されております。
ただし「段ボールの蓋を閉めると丈夫になる」のと同じ理屈で、2Fや3Fの床に大きな穴を開ける行為(吹き抜け)は極端に家の構造を弱くしてしまう要因となります。
SE構法では構造計算(許容応力度計算 / 立体解析構造計算プログラム)によって「吹き抜け」による構造的な弱点を考慮し、家全体の構造や金物を最適化することで安全安心の「吹き抜け」を計画しております。
4. オーバーハング
「オーバーハング」とは下階よりも上階の床が張り出して広くなっている設計のことを言います。
特に狭小敷地の有効活用においてよく計画される設計手法ですが、構造的には不安定になりがちで木造では耐震性の確保が難しい計画です。
SE構法では構造計算(許容応力度計算 / 立体解析構造計算プログラム)によって、木造では危険とされている「オーバーハング」も安全安心に計画できます。
5. スキップフロア
バリアフリーの観点から、家の中の段差はなるべく避けるというのが王道の設計手法ですが、特に狭小住宅において、空間の広がりを演出する上で「スキップフロア」は貴重な設計手法とも言えます。
ただし同一フロアで床面の上下方向がズレることで地震時における大きな横方向の外圧に対しては弱点であると言われております。
SE構法では構造計算(許容応力度計算 / 立体解析構造計算プログラム)により、構造的な弱点を考慮し家全体の構造や金物を最適化することで、安全安心の「スキップフロア」を計画しております。
6. 屋上利用
都市部において敷地に余裕がない場合に魅力的なアイテムが「屋上利用」です。
ただし構造計算をしない木造住宅では屋根材以上の荷重がかかることを想定しておりません。屋上ですから当然、人が何人も集まることが想定されます。
SE構法ではその荷重を考慮して構造計算を行いますので安全安心の屋上利用が可能となります。
7. 狭小住宅
大空間・大開口が得意なSE構法ですが、何も大豪邸に限って恩恵があるわけではありません。特に「狭小住宅」においてもSE構法はとても魅力的な構法と言えます。
SE構法の強みを活かすことで、壁や柱の少ない開放的な間取りは「狭小住宅」に新たな可能性をもたらします。
8. 間取りの可変性
スケルトン(構造躯体)、インフィル(仕切り壁などの内装)を分離した考えを「スケルトン&インフィル」と表現しますが、木造住宅においてもこの考えが適応できることがSE構法の特徴の一つです。
家族の成長と共に間取りを可変させていくことが、将来にわたって快適な暮らしを実現させる重要な要素の一つです。
SE構法の最大の特徴である「ラーメン構法」は耐震性を保ったまま間取りを自由度を高めることで、リフォームやリノベーションがしやすく、家の資産価値を高く維持していくことが可能です。
SE構法で実現できることをまとめると。。。
SE構法の強さの秘密
1. 構造計算
SE構法の最大の特徴の一つは全棟「構造計算(許容応力度計算)を行うことにあります。実は日本で建てられている木造住宅の80%以上は構造計算による「科学的に根拠のある耐震性能」が確かめられておりません。
日本の法律では、500㎡以下および2階建て以下の木造住宅の建物は簡易計算でOKとされているため、多くの会社は構造計算(許容応力度計算)を行なっていないのが現状です。
SE構法は国の法律に甘んじることなく、建物の階数や規模を問わず全ての物件で構造計算(許容応力度計算)を行うことで最高水準の耐震性を実現させております。
現在日本において木造住宅の耐震性の確認方法は以下の3つの方法があります。 ○ 【簡易(壁量)計算】 ○ 【性能評価(品確法)による壁量計算】 ○ 【構造計算(許容応力度計算)】
「耐震等級」の評価は、【性能評価による壁量計算】か【構造計算】のどちらかでよいことになっておりますが、厳密にはそれぞれで導かれる実際の耐震強度には明確な差が生じます。
上記表でも分かる通り、【壁量計算】で導かれる耐震等級3は、【構造計算】で導かれる耐震等級2よりも耐震強度は下回ります。
SE構法の耐震等級3がいかに強いか分かると思います。
耐震等級は一般的にはこのように定義されています。
耐震等級1 建築基準法レベル
耐震等級2 耐震等級1×1.25倍
耐震等級3 耐震等級1×1.50倍
☆ オリジナル工法を持つ大手ハウスメーカーは【型式認定制度】という方法を使って、「壁量計算」や「構造計算」を省略しています。
【型式認定制度】は、あるモデルプランを元に構造計画のルールを定めることによってこのルールに基づけば、最低限耐震性能が担保できるというお墨付きを国から認定を受ける制度で、大手ハウスメーカーの特権と言われています。
【SE構法】は、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)と同じ手法で構造計算を行ってます。
柱や梁そのものを互いに【剛接合】し、強固な構造躯体を作り上げる。
従来、鉄骨造やRC造において主流だった【ラーメン構法】を日本の木造住宅に取り入れたのが【SE構法】です。
ここからは実際にSE構法と在来軸組工法を比較しながらSE構法の強さの秘密をご紹介していきたいと思います。
2. SE構法の基礎
木造住宅といえども、基礎は紛れもなくRC造(鉄筋コンクリート造)です。
本来RC造は構造計算(許容応力度計算)が義務付けられておりますが、木造住宅の基礎については免除されており、簡易なチェック表(配筋計画)レベルで計画されているのが現状です。
構造計算によって導かれるSE構法の基礎計画はFEM(有限要素法)解析により建物に伝わる力を解析し、その地盤に応じた最適な基礎設計を行います。
そのため在来軸組工法と比べてコンクリートの厚みや鉄筋量が多くなりますが、それは科学的根拠によって導かれた最適解であると言えます。
○ コンクリートの厚み、鉄筋量が違う
SE構法の基礎はFEM解析により、在来軸組工法の基礎と比べて「立上がり」「耐圧盤」とも厚いコンクリート計画となり、鉄筋量も多く計画されております。
3. 構造材の種類とサイズ
SE構法の構造材は強度が高く品質の安定した「JAS構造用集成材(エンジニアリングウッド)」を採用しております。
SE構法が無垢材を使用しない理由は、無垢材は強度等級が不明であるため構造計算に向いてないからです。
強度は同じ樹種の無垢材と比べおよそ1.6倍の強度があると言われております。
また、構造材の断面サイズもSE構法は「4寸(120mm)」が標準となり、「柱材」で在来軸組工法の1.3倍、「梁材」で1.14倍となっております。
SE構法で使用される構造用集成材は柱、梁1本1本の強度が検査されています。
含水率も15%以下、MSR(マシーンストレスレイテッド)による強度試験をクリアしたものを使用しています。
4. SE構法の専用金物
A:柱と梁の接合【SE構法専用金物】
木質ラーメン構法を可能としたSE構法の要(かなめ)はSE構法専用に開発された金物にあります。
柱と梁の接合は断面欠損が極めて少ない構造とSE構法専用の金物とが、【剛接合】を実現されるため優れた耐震性能を発揮します。
SE構法専用の金物の厚みは、重量鉄骨と同じ6mm厚で通常の在来軸組工法で使用される構造金物の倍近い厚みで作られております。
B:強度の秘密はSE構法専用の【Sボルト】
柱と梁の接合において弱点となるのが、木材の乾燥・収縮による「木のやせ」や繰り返し地震によって金物に緩みが出ることです。
施工時はしっかりと接合されていても将来接合部が緩んでしまったらラーメン構法であるSE構法のメリットが継続されません。
そこでSE構法では長期にわたり柱と梁の剛接合を可能とする【Sボルト】を全棟採用しております。
【Sボルト】は従来の金物工法の欠点を克服するために開発された特殊なボルトで引張剛性が格段に向上しており、その引抜き耐力は53.9KNと強大で通常のボルトの27.3KNと比べ倍近い強度の差があります。
C:基礎と柱の接合【SE構法専用HD金物】
地震による建物の倒壊で多く見られるのが柱が基礎や土台から引き抜かれてしまっている状況です。
基礎や土台がしっかり作られていても、柱が離れてしまっては巨大地震の力に建物が耐えることはできません。
通常の在来軸組工法では「ホールダウン金物」(以下HD金物)がこの役割を担っておりますが、SE構法ではさらに強靭なHD金物が開発されました。
【SE構法専用HD金物】はその引き抜き耐力が24.4t〜50tと強大で、在来軸組工法で使われるHD金物の引き抜き耐力5.4tと比べ5〜10倍の耐力を持っています。
D:SE専用金物の耐久性
金物の耐用年数について意識が向く方はほとんどいないのが現状です。
SE構法専用の金物は「カチオン電着塗装」がされており、約600時間かけた塩水噴霧試験において標準地域では168年、塩害地域でも100.8年に相当する耐久性が実証されております。
在来軸組工法で使用される金物ではこのようなデータは開示されておりません。
5. SE構法の耐力壁
A:耐力壁の種類
昨今の木造住宅は耐震性確保のために「面材耐力壁」の手法が多く採用されております。
一般的な在来軸組工法は「JAS特類2級合板」を使用しているのに対し、SE構法では「JAS特類1級合板」を使用しております。
1級合板と2級合板の違いについてですが、1級合板は「曲げヤング係数」「曲げ強さ」「面内せん断力の強さ」の3つの検査が行われますが、2級合板は「曲げヤング係数」のみの検査しか行いません。
どちらも強度的には問題ないとされておりますが、SE構法ではより強度の信頼性が高い1級合板を選択しているのです。
1級合板と2級合板の検査項目の違い 【JAS特類1級合板】「曲げヤング係数」「曲げ強さ」「面内せん段力の強さ」 【JAS特類2級合板】「曲げヤング係数」
B:耐力壁に使用される釘
耐力壁を構成する合板は土台、柱、梁などの主要構造部に直接「釘」で貼り付けられますが、その釘の種類にも注目です。
一般的な在来軸組工法では「N50」という規格の釘が使われますが、SE構法では「CN50」という規格の「N50」よりも太い釘が使われます。
大地震などにより、外圧に対して抵抗する合板と主要構造部(柱、梁など)が一体となった耐力壁は、釘に大きな「せん断力」が加わります。
この「せん断力」に耐えるために、釘の数(ピッチ)の他に釘そのものの「せん断強度」も必要です。
SE構法では「JAS特類1級合板+CN釘」の併用で優れた耐力壁の強度を実現しており、耐力壁1枚で通常の在来軸組工法の耐力壁3.5枚分の強度を発揮します。
6. SE構法の水平構面
水平構面
構造計算で期待される耐震性を確保するためには、柱と梁、壁の強度と同様に、床面の強度も非常に重要です。
SE構法では、専用の28ミリ厚の構造用合板を使用し、通常より太い釘「CN75」で直接梁に固定することで、高い床剛性を確保しています。
7. SE構法の品質基準と保証
SE構法はその独自のノウハウをもった「クローズド構法」です。
専用のプレカット工場で厳しい品質基準が保たれており、SE構法開発社の(株)NCNから認定を受けた「SE登録施工店」の技術研修を受け修了した監理者が現場を担当する決まりになっております。
SE構法専用のプレカット工場からは構造部材の品質管理の証として「出荷証明書」が発行されます。
また現場においては、瑕疵担保責任保険法人による躯体検査とは別に、一棟一棟
全ての物件において構造マニュアルに沿った施工がされているかを写真及び書類でNCNに報告、チェックを受けることで、SE構法を供給している(株)NCNが引き渡しから10年、さらに最長20年までの構造性能を保証する体制になっております。
その保証内容は「SE住宅性能保証書」の発行において以下の内容が担保されております。
【SE住宅性能保証書】
○ 水平部材の1/120以上の傾斜
○ 床・梁など通常荷重下での1/500以上のたわみ
○ 柱・壁の鉛直部材の1/120以上の傾斜
☆ 基礎・構造躯体とそれを構成する金物に起因する建物の損傷
SE構法と在来軸組工法の比較表
SE構法と他の木造との最大の違いがここ!
SE構法と他の木造との決定的な違いは構造部材の供給体制の違いにあると言えます。
図でまず一般的な設計計画から現場に構造部材が納品されるまでの流れを見てください。
① 仕事はA社の工務店からスタートし、B社の構造設計事務所に「構造計算」を 依頼します。
② B社の構造設計事務所は構造計算書をA社に納品します。
ここでB社の仕事は終わります。
③ A社は納品された構造計算書をC社のプレカット業社に送り、構造材の選定と加工を依頼します。
④ C社のプレカット業社は加工済みの構造材をA社の現場に納品します。
ここでC社の仕事は終わります。
以上のようにすべて分業されているので、それぞれ持ち場の仕事が終われば「あとはよろしく〜」の世界です。
それではSE構法の設計計画から現場に構造部材が納品されるまでの流れを見てみましょう。
SE構法の場合は構造計算から構造材の選定と加工(プレカット)、及び構造材の現場納品まですべて(株)NCNが行います。
在来軸組工法の流れの中で解説した②、③、④が全て同一の管理下で仕事が流れていきます。
そこでSE構法の技術研修を受けたSE登録施工店が施工することで責任の所在が明確になります。
ここがSE構法採用の一番のメリットだと感じております。
SE構法の圧倒的な実績
SE構法は開発されてから約25年以上、累積20,000棟以上の構造計算の実績があります。
一つの会社で20,000棟以上の木造住宅の構造計算をこなし、構造材を供給してきた実績を持つ会社は日本で唯一(株)NCNだけと言えます。
そして過去25年の間で経験した巨大地震(新潟中越地震、東日本大震災、熊本地震)においても半壊、倒壊は1棟もありません。
まとめ
以上【SE構法】について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
おそらく20年以内には「南海トラフ地震」や「首都直下型地震」が発生するという専門家の見方が有力です。
来るべき巨大地震に備えるために建物の耐震性の確保は避けて通ることはできません。
1995年に発生した「阪神淡路大震災」で亡くなった人のおよそ8割は建物の倒壊による「圧死」だと言われています。
本来、家族の命を守るはずの家が、巨大地震によって凶器と変貌することに目を背けてはいけません。
SE構法はきっと大切な人の命を守ってくれるはずです。
それではまた。
2020.12.21
2022.09.24 改稿
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